koto-koto

備忘録や情報まとめのメモ。間違いがありましたらご指摘いただけるととてもとても有り難いです。

【Gentleman's Journal】グウィリム・リー インタビュー

2015年のインタビューの拙訳です。

 

 

 グウィリム・リーを待ちながら、私はIvy Market Grilの外の街灯柱に遠慮がちに寄りかかっていた。大勢いるロンドンのストリートパフォーマーの一人がカーテンコールの間に食い扶持を稼ごうとひっきりなしに喋る声が聞こえてくる。5ポンドでも10ポンドでも15ポンドでも、観客がポケットにしまいこんだ小銭をねだっているのだ。エンターテインメント業というのは大変な仕事だ。私の隣に、スポーツサングラスとだぼっとしたTシャツとロールアップジーンズの男性が自転車を停めた。彼はしばし携帯でいくつかのメールに目を通し……それから顔をすっと上げ、私の方を向いて「オリバー?」と口を動かした。彼が近づいてきて私達は軽く握手をし、レストランに入った。
 読者が日曜午後ののんびりした刑事ドラマ『バーナビー警部』に夢中でないとしたらブリストル生まれのウェールズ系の彼に馴染みがないのももっともだが、7月5日の『A Song for Jenny』の放送開始でグウィルは土曜の夜のテレビ画面の主要人物となるかもしれない。彼は我々が選ぶ今夏最も話題のブリティッシュ・TVスターの一人だ……

 

俳優になりたいと思ったきっかけは?
最初は趣味の一環として演技を始めたんだ。学生時代はずっと体育会系で、ラグビーの仲間意識やチームプレイが好きだった。学校で演劇を始めて、舞台にもそういう要素があると気付いた。当初は男子校に通う中で女の子と出会う機会を得られる趣味という感じだったよ。バーミンガム・セントラル・テレビジョン・ワークショップという団体にいて、そこを通じてロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのリチャード三世の仕事をもらった。当時僕は15歳くらいで、本物の俳優たちの中に混ざるのがどういうものなのかを感じる機会になった。演劇で生活している大人の俳優たちを見るのはわくわくしたし、仕事にできるんだとそれで気付いたよ。17歳の頃には自分はこの趣味を生業にしたいとわかってた。

この時点で英国のTV番組の主要キャラを演じることは想像していた?
僕は2008年にドラマスクールを出たんだけど、ドラマスクールを卒業するとき、破滅のエピソードを聞かされるんだ――みんなたくさんの希望、楽観、興奮を抱いてるわけだけど、同時に現実を知らせることでそれを和らげるんだよ。競争の激しい業界なんだと気付かせる。8年間ずっとこの仕事をしていて、レギュラーTV番組に――人気があって成功しているドラマにレギュラーキャラクターとして出演していることは夢に近いね。

5年後にどうありたい?
今やってる事を続けられていてほしい。だけど同時に違うことをして、自分のハードルを上げて、決して後退しないこと。これまでのすべての仕事でそれぞれ違う挑戦があったという意味で僕は幸運だ。後退というよりも進歩できるかどうかの問題だね。クラシックな演劇の役をやりたいし、映画にも出たいし、コラボレーションもしてみたいかな。

この人とコラボレーションしたいという相手はいる?
ルーファス・ノリスがナショナル・シアターの仕事を受けたんだ。彼と仕事ができたら素晴らしいと思う。

このようにセンシティブな問題にフォーカスしていることを鑑みて、A Song for Jennyへの反応はどのようなものになると思う?
どうだろう。我々にとって重要だったのは、制作中はこの作品がどう受け止められるか、どんな反応を受けるかというのを考えないということだった。我々がこの物語にできる限り誠実であることに重きを置いていて、それはこのとても私的で辛く痛ましい物語に関係する一家にとってとても重要なことだった。台本を読んだ時、物語をしっかりと表現し、あの経験に対して正直である義務を感じたよ。

そしてその通りにできたと思う?
心からそうであるよう願ってる。ご家族は既にこの作品を観ていて、支持してくれていると思う。政治とは無関係の、彼らの個人的でパーソナルな物語なんだ。我々が誠実に表現したならば観た人は好きなように受け取れる。願わくば深い悲しみを描いたこの個人的な物語がより広い意味での深い悲しみを物語ることができればいいと思う。

あなたのキャリアのハイライトは?
これまでの僕のキャリアには画期的な出来事がたくさんある。とても初期の頃にお墨付きを得たこと、「きみはいいね、私はきみを信じるよ」と言ってくれる人がいたこともその一つ。ドラマスクールに合格したこともそうだね。

……では最悪の出来事は?
挫折は常にある。より良い俳優になるために必要なことの一つは挫折への対処法を学んで深刻に考えないことだ。良き俳優でいるということはそこから立ち直って自身の能力を信じることができるということ。挫折は、そうだね、しょっちゅうある。これという例は浮かばないけど、避けられないことだしこの仕事では当たり前のことなんだ。

あなたのスタイルを作る独特な要素は?
今日の格好は最高の例とは言えないね、自転車だからTシャツとジーンズと運動靴にしたんだ。でもドレスアップするのは好きだし、きっちりと仕立てが良くて、シンプルさがあって機能の中に美しさがある服が好きなんだ。僕はアートや建築といったものと同様に服の実用性を尊重してる。本物の美は純粋な機能性から来るものだし、機能のない美は単なる見た目の良さであり、薄っぺらで無意味だ。だけど本当に美しい服というのはそのシンプルさにおいて美しい。と同時に学生風も好きで、ジーンズとだぼっとしたTシャツと運動靴とキャップっていう格好も好き。

あなたにとって紳士の定義とは?
紳士であるということがとても複雑な時代だと思う。単純な話ではなくて、僕は古風で騎士的な意味での品位やマナーや道義心というものの本質は好きだと思う。だけど騎士道精神というのは最近では問題のある考え方だと思うんだ。男性は女性より優れているという思想を永続させるようなものだと思うし、今我々がやるべきことではないと思う。自分の道義に従って動くことが重要だと思うんだ。女性相手にだけドアを開けておいたり女性相手にだけ地下鉄で席を譲ったりすることは男性優位社会の継続を許すことになってしまう。僕はマナーと品位という点において"紳士的"というのを信じてはいるけど、いかなる先入観も抜きにしてすべての人を対象にするべきだと感じてる。僕が誰かのためにドアを開けておくとしたら、相手が若者でも老人でも、男性でも女性でもそうするよ。守るべき素晴らしいものは伝統だけど、人を束縛し続けるだけの伝統には反対だ。

仕事を離れてリラックスする方法は?
映画を観るのが大好き。あとは読書や、ポッドキャストを聞いたり、友達と遊んだり、友達のために料理をするのが好き。僕の彼女は大抵の"男子たち"の話題はフットボールとビールと女性なのにってジョークを言うけど、僕らはその代わりに料理の話をするんだ。

最も共演してみたい俳優とその理由は?
ゲイリー・オールドマンはとても素晴らしいと思う。高潔な人で、自分を曲げることはまずない。彼のすべてのキャラクターがよく作り上げられてる。有名人としてか、個人としてか? 彼にはそんなことは関係ない。ムービースターと俳優には違いがあって、確かに彼はムービースターだけど、本物の俳優なんだ。それとクリストファー・ウォーケンともすごく共演してみたい。猛烈な現場になるだろうね。

『バーナビー警部』の視聴者にhunk(逞しくセクシーな男性)と見なされるのはどんな気分?
うーん、その話は初めて聞いた。すごく面白いと思うし素晴らしいと思うよ。hunkだと思ってもらえるのは嬉しいけど、状況次第だよね……僕をアベンジャーズのキャストと比べたらhunkには見えないと思うよ。

エミリー・ワトソンとの仕事はどう(だった)?
彼女は驚異的な女優だ。次元が違うと思うし、進んで辛い経験をする人なんだ。エモーショナルな経験を捏造して苦しむふりをする俳優もいるけど、彼女は本当に、気高さと力強さをもって自ら過酷な試練を受ける。強い女性だ。だけどこれ見よがしでも傲慢でもなく、誠意と共に行動する。僕は彼女から多くを学んだよ。

10歳の頃のあなたが今のあなたを見たら満足すると思う? 10歳のグウィルは今のような未来を思い描いてた?
満足すると思うよ、信じられないもん! 本当に信じられないよ、ロンドンに住んでるなんて。ここは素晴らしい街で、現実なんだって自覚するためにときどき自分をつねらないといけないくらいだ。世界中からこの街を観るために人が集まるけど、僕は大好きな仕事をしながらそこを自転車で走ってるんだからね。家族がいて友達がいて最高の生活を送ってて、それに俳優をしてる!