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【movieview.dk】ベン・ハーディ インタビュー

ボヘミアン・ラプソディについてのロジャー役ベン・ハーディさんのインタビュー。

 

 

 

Queenとは以前から繋がりがありましたか?

誰もがそうとは知らず無意識にQueenを認識してるんじゃないかな。スポーツの試合に行くたびにWe Will Rock Youのドン・ドン・チャッが聞こえてくるし、コマーシャルを見るとI Want To Break Freeが使われてるからね。Queenの大ヒット曲に触れずにいることなんてできない。だけど僕がQueenを意識して聴いたのは――正直に話すと酒が入ってたんだけど――深夜にバーにいた時に聞こえてきたボヘミアン・ラプソディだったんじゃないかな。以前にも聞いたことがあったはずだけどちゃんと耳を傾けたのはそれが初めてで、聴いていてかなり感情的になった。あの歌には多くの痛みが込められてる。胸にこたえたよ。彼らの偉大さを理解したのはそれが初めてだったと思う。

ロジャー・テイラーとの初対面はいつ?

僕らがロジャーに初めて会ったのはなんとアビーロードスタジオだったんだ。スタジオ自体が象徴的ですごいところだ。僕らは事前録音のためにそこにいて、ブライアンとグウィリムの歌うWe Will Rock Youを録ってふたりの声を混ぜようとしているところだった。そのとき初めて会った。僕は彼らの映像を見まくっていてある意味ストーカーみたいな気分だったのもあって緊張してたのを覚えてる。本当に何時間も何時間も映像を見てたから。有名人に会って舞い上がることなんていつもはないんだけど、仕事のために過去数週間没頭してた相手と会うのはすごく奇妙な経験だった。だけど彼は協力的ですごく親切で、僕にちょっとしたドラムレッスンをしてくれたんだ。

ドラムは撮影以前から叩けた?

できなかった。制作陣にはできるって言ったよ。

俳優はみんな"馬なら乗れるよ"と答えるそうですしね…

とりあえずイエスって言って後から考えるんだよね(笑) そのときはドラムの授業を受け始めたばかりですごく不安だった。僕のアイデアじゃなくて、プロデューサーの一人が手配して写真を撮りたかったらしいんだ。陥れられた気分だったよ!(笑) だけど実際素晴らしい経験だったし、ロジャーは僕の境遇をよく理解してくれていて、手を差し伸べて彼のトレードマークを見せてくれたんだ。

何を見せてくれたんですか?

彼は跳ねるような音を出すためにいつもバックビートでハイハットを少しだけ開くんだ。すごく独特で、ほとんどすべてのトラックで聞けると思う。そういうちょっとしたテクニックを教えてくれた。聞いていた情報ではあったけど彼が実践するのを見るのはすごく役に立ったし、その上アビーロードスタジオでそれができたことは最高だったよ。

ドラムはかなり簡単に身についた?

簡単にではなかったね。すごく難しかった要素がふたつあって、四肢を独立させて動かすこと――これに時間がかかった――、それから手と足のスピードが難しかった。筋肉は時間をかけて徐々につくからね。今回は突貫工事だったからそういう小さくて複雑な筋肉を鍛える時間が限られてたんだ。そのふたつが主に難題だった。リズムについてはどうにか習得したと思うし精神もついていけたけど、簡単ではなかったよ。できるとは思ってたけど、自分に必要なだけの進歩を短期間でやりきろうとするのが難しかった。

これからもプレイを続けるつもり?

問題は僕がロンドン南東部のフラットに住んでて大きなドラムキットを置く部屋がないことなんだよね。実家には置いてあって行くたびに叩いてるんだけど。本当にドラムが恋しいよ。仕事でいつも移動してるからギターは持ち歩くことが多いけど、ドラムを続けたいなと思う。

ライヴエイドのレコーディングの思い出は?

クールだったのと同時に不安だった。映画の最後から始めたわけで、僕たち全員、演奏能力についてもバンドとしてのまとまりについても心配してた。幸運なことに事前に5週間のリハーサルがあって結束する時間はたくさんあったけど、巨大な第一の関門だったね。終わった後はその経験が役に立ったよ。この経験ですごかったと感じるのは、ウェンブリースタジアムの7万人くらいの観客と世界中の何百万という人に向けて演奏したQueenの経験には及ばなかったけど、現場にいた200人のエキストラに向けた演奏だけでも物凄く高揚したということなんだ。僕はバンドをやったことがなかったからかなり興奮したよ。

ロジャー・テイラーのテクニックやニュアンスについて最も深い理解を得られた彼の映像はどれ?

あらゆる映像を観たよ。人柄という点では、1982年か1984年のオーストリアでブライアンと一緒に受けたすごく興味深いインタビューがあるんだ。彼とブライアンの関係が見て取れてすごく面白い。二人の間には軽い摩擦もあるけど敬意があって、彼は緊張した仕種を繰り返したり変わった動きをたくさんしてるんだ。すごく有用に感じたよ。実在の人物を演じる場合、大量の映像があったとしても、常に特定の状況下での彼らを見てるわけだから。今あなたに話している僕と15年来の友人と話しているときの僕が必ずしも同じ調子ではないみたいにね。それを読み解こうとするのが重要なんだ。彼独りのインタビューのときはぎこちなさや緊張感が垣間見えることが多いけど、ブライアンと一緒のときの彼はもっと寛いでる。

I Want to Break FreeのMVに触れなければ。ロジャーの女性役は素晴らしいことで有名ですから…

そのプレッシャーを感じたね。みんなに「きみはロジャーくらい可愛い女の子になるかな」って言われて、「そんな大ごとだって気づかなかったよ」って。ジョン・ディーコン役のジョー・マッゼロには一日中からかわれたよ。「見るに堪えないよ。太腿がでかすぎ。ロジャーはきみよりだいぶ細い太腿だった。ひどい女装だ」って言ってきて、一日中絡まれた(笑)

あなたの歌はどんな感じですか? ボヘミアン・ラプソディのメイキングで彼が超高音を出すのを見てわかるように、ロジャーの歌声の音域はすさまじいですが…

僕はあまり上手じゃない。ファルセットは弱いしロジャーとは違う。彼のボーカル能力は目覚ましくてどうかしてるよ。彼の声域はクレイジーだ。

彼はバンドの重要な存在でしたよね、多くのドラマーよりも…

もちろん重要だった。実際フレディの調子が悪いときは彼が多くの曲で高いハーモニーを担当してたんだ。なんにせよ高めのハーモニーはよく登場して、彼はその一部を歌ってた。彼の歌声は凄まじい上、軽々こなしてるように聞こえるからね。ボヘミアン・ラプソディのシーンの撮影では僕もファルセットで歌ったけど、僕の声が使われてるのかどうかは定かじゃないよ。*1

I Want to Break Free以外に彼らのMVの中で特にお気に入りのものはありますか?

突出してるのはRadio Ga Gaかな。すごく面白いと思う。なにに着想を得たのか彼らが話してるのを以前聞いた。映画からだったと思うけどタイトルが思い出せないよ。あのMVを見たことある?

ええ。フリッツ・ラングの『メトロポリス』を模倣したんだったかと…

そう、それだ。彼らはどの作品においても明らかに独創的だった。特に音楽だけど、MVも興味深い作品にしたんだ。彼らは音楽以外でも明らかにとてもクリエイティブだった。

それに作曲者はロジャーですね…

そのとおり。それにあの曲はロジャーのナンバーワンヒットだ。バンドメンバーはそれぞれナンバーワンヒット曲を書いていて、ロジャーの曲はRadio Ga Gaなんだ。

Queenのベストアルバムはどう捉えていますか?

技巧の面では彼らのベストアルバムは『A Night At The Opera』と『A Day At The Races』だと思う。とはいえ僕は最初の二枚のアルバム『Queen』と『QueenII』がすごく大好きだ。特にファーストアルバムが本当に大好き。一番好きな曲は『QueenII』のWhite Queen (As It Began)。だけど『Queen』は粗削りな部分があって、プロダクションも特にいいわけじゃない。当時は資金が限られていたけど、シェフィールド兄弟との仕事では生々しさがある。彼らの渇望や最高の作品にしなければという執念が聞こえてくるようだ。『Queen』にはいくつかの素晴らしい曲が収録されてる。Great King RatやLiar。ロックンロールのサウンドがあって、僕はそういう曲に傾倒しがちなんだ。インタビューではいつも人に聞いてほしい曲のタイトルを挙げるようにしてるよ。映画ではBGMとパフォーマンスを含めて35曲くらい流れるんじゃないかと思うけど、彼らには無数の名曲があって、言うまでもなくその全部を使うことはできなかったんだ。初期のアルバムを振り返って聞いてみてほしい。

映画でQueenとしてライブやレコーディングで演奏した中で、ライヴエイドを除いて最も際立っていた場面は?

日本でのライブ。小さな空間で撮ったんだ。ライヴエイドのシーンは飛行場で撮って、観客役のエキストラはいたけどそれでもとても開けた広い空間に感じた。満員のスタジアムを想像しないといけなかったんだ。だけど日本のシーンはもっと小さいリハーサルスタジオで撮影した。ストーンズがいつもリハーサルに使う所だよ。居心地のいい空間に100~150人の観客がいて、こじんまりしたギグみたいに感じた。マディソン・スクエア・ガーデンのシーンと日本ツアーのシーンがそうだったね。みんなが大声で歌い返してくれて、ロックバンドでパフォーマンスしている気分に一番近づけたんだ。

*1:サウンド・エディターのジョン・ワーハースト氏曰くベン・ハーディさんの声はロジャー・テイラーさんの声に混ぜて使われているそうです https://variety.com/2019/artisans/news/queen-freddie-mercury-1203131746-1203131746/