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So it Goes x Pedro Pacal

ゲーム・オブ・スローンズ』ショーランナーのデイヴィッド・ベニオフさんが聞き手を務めるペドロさんのインタビューです。

 

デイヴィッド:ハイ、ペドロ。それじゃ、君のキャリアを決定的に潰す一番いいやり方は何かな?

ペドロ:君なら知ってると思ったからこのインタビューを頼んだんだよ。

デイヴィッド:いい感じの反ユダヤ主義発言が効果的な気がする。

ペドロ:それは君に譲る。

デイヴィッド:無理だよ、僕はユダヤ系だぞ! さて、事の起こりから始めようか、ペドロ。教えて——オレンジ郡からはどうやって脱出したの?

ペドロ:まず、僕らがオレンジ郡に引っ越したのは86年か87年、僕は12歳になる頃で、7年生から12年生の間[訳注:日本で言う中1~高3にあたる]コロナ・デル・マー・ハイスクールに通わなきゃならなかった。よく晴れたオレンジ郡で過ごした7年生と8年生は闇の時代としか言いようがない——その年月が演劇オタクを開花させたんだ。8年生の後は単に周りに馴染めなかった。姉は溶け込んでたけどね。

デイヴィッド:君のお姉さんを知ってるけど、すごく楽しくてクールな人だよね。

ペドロ:僕は楽しくてクールじゃなかった。それか単に、楽しくてクールなふりをする方法を知らなかった。

デイヴィッド:今、よくあるカリフォルニアの学校を想像してる。生徒達はみんな美しく、日焼けして、一方君は——当時パンクロッカーだったとか?

ペドロ:違うよ、ただ『太陽の帝国』が最優秀作品賞を獲らなかったからって泣いてるような子供だったんだ……みんなは「何考えてんの?」って感じだった。

デイヴィッド:まああの作品に受賞させなかったのは犯罪だけどね。あの映画はスピルバーグの最高傑作の一つだ。

ペドロ:僕はサウンドトラックを買うタイプで、周りの人は僕がウォークマンで『太陽の帝国』の奇妙なデンマーク語の歌を聞いてるのを目撃してた。それで母さんがパフォーミング・アーツ・プログラムを——オレンジ・カウンティ・スクール・オブ・ザ・アーツを見つけてくれたんだ。入るにはオーディションを受けないといけなかった。僕は結局ロングビーチの高校に通う事になって、毎日40分くらいかけて通学して、ニューポートビーチ郊外の中流階級の環境で4年間を過ごした。NYUに入って——行かせてくれるように両親に頼み込んだ結果、戦いに勝って93年にニューヨークに辿り着いて、ある意味離れられなくなったんだ。

デイヴィッド:93年に何が起きたの? 仕事をもらい始めて、早々にエージェントを獲得した? どんな道のりだった?

ペドロ:在学中にすぐオーディションを受け始めて、事務所と契約した。卒業したらなんにも仕事がなくて——ウェイターをしてたけど次々クビになったよ。オレンジ郡では馴染めなかったとはいえかなり守られた環境にいたんだよね。真面目な話、約一年半で17個くらいの店からクビになったと思う。

デイヴィッド:全部レストラン?

ペドロ:レストランに、カフェに、コーヒーショップに……

デイヴィッド:仕事ができなかったの、店長に対する態度が悪かったの、それとも遅刻? なんでクビになったの?

ペドロ:それら全部。主に無能だったから。

デイヴィッド:その頃サラ・ポールソンと出会った?

ペドロ:うん、彼女はニューヨークで初めてできた友達の一人なんだ。そこが本当に幸運だったと思う。ニューヨークですぐに家族みたいな友達グループができたから。それによってニューヨーク市に素晴らしい基盤が築かれたし、今でも友達だよ。

デイヴィッド:それじゃ、『太陽の帝国』のクリスチャン・ベール以外で、観ていて「ファック、こんな人になりたい」と思った対象は誰だった?

ペドロ:なんでも観てたんだよね。視聴者・読者としてかなり若い頃から色々漁り始めたんだ。笑えるのが、俳優としてある程度世に出ると、好きな事は? 趣味は? って聞かれる機会があるんだけど、負け犬みたいな気分になるんだよ。普段何もしてない! って思うから。僕は運動は得意じゃないし、スキューバダイビングとか洞窟探検に熱中した事もないし——子供の頃と変わらずただテレビを見て本を読んでる。オレンジ郡で友達ができなかった頃に読書したりビデオを借りたりしまくったんだ。それでクラシック作品にハマって、早いうちにマーロン・ブランドジェームズ・ディーン、それにアメリカとイギリスの脚本家、例えばピンターに心奪われた。まあ全く理解してなかったけどね。だけどそれでもステージで自分が登場人物の一人を演じているのを想像するのはとても楽しかった。『太陽の帝国』は僕のイマジネーションを形作ったスピルバーグの映画たちの中の一つに過ぎないんだ。

デイヴィッド:今ここでスティーブン・スピルバーグとの仕事募集活動をしてる?

ペドロ:(笑) 間違いなく。

デイヴィッド:君の反ユダヤ人発言を彼が聞いちゃえば終わりだね。無理無理。

ペドロ:せいぜい僕に反ユダヤ主義を押し付けなよ。

デイヴィッド:それで今、君はニューヨークにいて17個の飲食店からクビになった状況な訳だ。初めてのブレイクは何の役だった?

ペドロ:それがおかしなところで、世間一般で通じるような意味でのブレイクは一度もしてないと思うんだよね。僕は舞台で頑張り抜く事で憧れの人達の後を追いたかったんだ。ニューヨークの演劇界出身の——アル・パチーノメリル・ストリープロバート・デニーロといった面々の足跡に惹かれてた。残念ながらそんなロマンチシズムが僕をニューヨークに留まらせて家賃を払うのに必死になる羽目になった。とうとうシアター・クラブのオフ・ブロードウェイ公演に出演できて——そこで君の妻のアマンダ・ピートの演劇が紹介されたんだよね。30歳になる頃にはウェイターの仕事はやめてたかな。粘り続けて、『ロー&オーダー』とか色んな警察ドラマ、『グッド・ワイフ』なんかに出て、どうにか安い家賃を払って舞台の仕事を続けた。
あのさ、デイヴィッド、君が僕より賢い事を知ってるから歯切れが悪い物言いしかできなくなるよ。このインタビューは大間違いだった。実際今すぐキャンセルして他の人に替えてもらいたい。ダン(・ワイス、『ゲーム・オブ・スローンズ』)を呼んでもらえる? いや待てよ、子役の誰かにしよう(笑)

デイヴィッド:まあとにかく……その時点で成功した友人や脱落した友人はいる?

ペドロ:サラ(・ポールソン)がそうだよ。彼女は初仕事をもらって以降ほぼ途切れなかった。『ロー&オーダー』のゲスト出演が決まった時は僕たちみんな仰天した——信じられなかった。僕からしたらとても早い成功で、羨ましかったし刺激を受けたけど、彼女に話を聞いたらきっと、”今年”やっと上手くいき始めた、って言うよ。おかしな話だけどそう感じるものなんだと思う。僕のニューヨークでの初めてのオフブロードウェイの舞台では、ジュリアードを出たばかりのオスカー・アイザックと共演したんだ。僕の目には彼は彗星みたいに先に売れていったように映った。彼はレオ・ディカプリオやリドリー・スコットと一緒に撮影をしてるけど、今話を聞いたらやっぱり「うん、今年はいい方向に進んでる」って言うと思う。陳腐な台詞に聞こえるだろうけど、大事な人が成功してると物凄くほっとするんだ。自分が同じ立場でもそうじゃなくても、尊敬してる大好きな相手の成功はいい気分だ。

デイヴィッド:ゴア・ヴィダルは「友人が成功するたび私の一部が死ぬ」と言ってたけど。

ペドロ:まあね、でも今言った2人は別だよ(笑)

デイヴィッド:疑念を抱いた事は? 俳優業を離れて別の事をしようかって考えた?

ペドロ:結局とてもシンプルなところに落ち着いたと思う——長い間打ち込んできた事によって苦労も不安定さもすっかりお馴染みになってそんなに恐れる事じゃなくなったんだ。俳優になりたいっていう欲求は幼い頃から僕のアイデンティティーを形作ってて、スピルバーグ映画に出たいっていう子供時代の夢想から始まった——それこそ『太陽の帝国』のポスターのクリスチャン・ベールのシルエットは自分だって周りの人に嘘をついてたよ。それもあって友達ができなかったんだけど。
他にどうすればいいのかわからないって事を自覚し出したんだよね……自分は『ロー&オーダー』のキャスティングルームで必死に4行の台詞を覚えようとしてる73歳のおじいちゃんになる運命なんだって。今でも充分にありうる事だよ。

デイヴィッド:『ゲーム・オブ・スローンズ』に至る経緯は? 読者が知りたがってる。興味深い話だ。

ペドロ:僕が指導役を務めていた子が、君のドラマの素晴らしい役のオーディション映像を撮ったんだ。僕は当時からドラマを観てて、その台本には視聴者の大半にとって最も重要なネタバレの一つが含まれてたから、最初から興味を抱いた。僕ら視聴者の中にはジョフリーが酷い目に遭うかどうか見届ける為に君のドラマを観続ける事を己に課してた人がいたんだ。だけどその満足感は、その子の録画の手伝いでオベリンの台詞を代読した時すぐに剥ぎ取られたよ。読み続けるにつれて、白状するのは恥ずかしいけど、完全に気持ちが繋がって自分の中に強力な火が点いたんだ。すぐにそのキャラクターに愛着を覚えて、代理人から資料をもらってオーディション映像を撮る事に全力を注いだ。僕は無名だったしヨーロッパのパスポートを持ってなかったから望みがない事は確信してた。それで18歳の頃にニューヨークに移ってきて初めてできた友達、サラ・ポールソンに電話したんだ。僕の最も親しい友達の一人で、君の妻のアマンダの親友でもある。彼女に電話して、誰も見てくれないだろうけどこういう役のオーディション映像を撮ったんだって言ったら、彼女は僕が頼み終わる前に映像を自分に送るように言って、その夜に彼女とアマンダが君に映像を見せた。

デイヴィッド:君を雇った後ですら役が決まった事を君は信じてなかったよね? サラに聞くたびに「彼は役が決まったと思ってない」ってずっと言われてた。衣装合わせの為に君をベルファストに送った時もまだ君は信じてなかった

ペドロ:最高だね。その話が僕の話を裏付けてくれるよ……誰も決まったって教えてくれなかったんだ! 僕のエージェントも緊張してたのかもしれない。僕は明らかに緊張してたし、信じがたかった。僕みたいに長くやってると九死に一生を得る経験は何度もあるし、良い仕事と悪い仕事は見分けられるようになる。それに当たり役もね。もちろんドラマの人気の高さも大きかったけど、すごくいい役柄だったんだ——あんなにいい役を獲得する事ができるのはスリリングであると同時に恐ろしい。そうそうある事じゃないよ。

デイヴィッド:オベリンはあのドラマにおいて唯一無二で、我が道を行く存在だ。それは君があの役に巧みにもたらした要素だよ。初回のミーティングに来た時、君はまだ役が決まったと信じてなかったしまだ契約は結んでなかったかもしれないけど、でも君があの役に落ちようと思ったら立ち上がってパンツを下ろしてデスクにウンコするくらいしないといけなかったと思うよ。それくらいあのオーディションは強烈だった。それでもまだサラから君が受かったって信じてないって聞いて……。

ペドロ:そう言われてみるとパンツを下ろしてデスクにウンコしたな。

デイヴィッド:その話はしない事になってたけど。

ペドロ:ロンドンに送られて頭からドロドロをかぶせられて肩と頭と顔の型を取られた時も、僕はまだ役に受かったんだって100%は信じてなかった。

デイヴィッド:君は実際役に受かった。最初のシーンはなんだった?

ペドロ:僕の最初のシーンはピーター(・ディンクレイジ)とのシーン。

デイヴィッド:外国で撮影してて、編集前の映像を見て君にメールしたら「良かった、完全にしくじったかと思った」って返ってきたのを覚えてるよ。それが君の秘訣なのかもね——自分の良さに気付いたらだめになっちゃうのかもしれない。

ペドロ:未だに君の言葉を信じてない。病気だよ——心理学的な病気。撮影初日に軽くパニックになったのを覚えてる。あんなに初期の撮影で僕があのシーンの良さを生かせるはずがなかったから。それから君がメールをくれたんだ。「素晴らしかったよ」と言われた訳じゃなかったけど、大勢のキャストと複雑なロケーションを抱えた多忙な君が時間を割いてとても心の広いメッセージを書いてくれた事で、落ち着いて臨む事ができたと思う。とても感謝してる。

デイヴィッド:まあピーターが手強い共演者だと知ってたからね。彼の暴力的な一面は知られてないけど……

ペドロ:ベンチを投げられたりするのがきついよね。

デイヴィッド:実話に基づくドラマ『ナルコス』の話に移ろう。どうして出演する事になったの? エリック・ニューマンが『ゲーム・オブ・スローンズ』を観て「うわ、こいつが必要だ」って考えたの、それともオーディションを受けたの?

ペドロ:Netflix社の誰かがさっき話したシーンを観たんだと思う。ナルコスの製作総指揮のエリックは当初僕のスケジュールが空いてると知って物凄くがっかりしたんだ。『ナルコス』のキャストを探していた頃マウンテンとの決闘シーンを楽しみにしていて、僕がハビエル・ペーニャ役で出演できる事に物凄く動揺したらしい。ちょっとしたネタバレだからね。すぐさま話が来たし、オーディションを受ける必要がないオファーはあれが初めてだった。出演するかどうか決断する猶予は12時間くらいしかなかった。

デイヴィッド:君のキャラクターは実際の(DEAエージェント、ハビエル・)ペーニャにどれだけ忠実なの?

ペドロ:彼は実際の経験を進んで秘密にしてるんだと思う——実際はドラマで描いた以上の事をしたからなのか、その逆なのか。僕は実際にそこにいた人物を可能な限り自分流に解釈できるようにしたい。僕にとって、それに視聴者にとって一番興味深いのは、白黒はっきりした物語じゃなく曖昧なまま進んでいくやり方なんだ。善人が悪人と戦うだけじゃない。このドラマではとても信憑性のある映像体験を作り出してる。演者はこの視覚的な展望のピースの一つであって、もしそれをコントロールしようとしたら浮いてしまうと思う。

デイヴィッド:彼から「え、俺は左手で煙草吸った事なんてなかったけど」とかいう反応が来た事はある? それとも口出しはなし?

ペドロ:全く口出しされてない。電話で話すと彼はこんな感じ。「マックで会った可愛い女の子が君が『ナルコス』で僕役を演じるって知って君に電話番号を渡してくれないか頼まれたんだけど」、「スタバで会った可愛い女の子から…」

デイヴィッド:出会う女の子全員に彼の存在がNetflixに永遠に残るって話をしてるんだな。

ペドロ:彼はとても協力的でいつでも相談に乗ってくれるんだ——悠然とした人だよ。あのキャラクターをどう描いても怒らないだろうね——仮に彼を車椅子の人物にしたり連続殺人鬼にしても彼は「ま、ただのテレビだし」で済ませると思う。実際に起きた事なんて誰も知らないってことを彼はわかってるからね。

デイヴィッド:それじゃ、中国と、君が一緒に仕事ができて大興奮した監督の事を聞こう。『グレートウォール』の話を教えて。

ペドロ:僕の映画オタクぶりを広く取り上げてきた通り、チャン・イーモウを知ったのはかなり若い頃だった。『紅夢』や『秋菊の物語』、『上海ルージュ』を映画館で観たよ。だからハリウッドと中国映画業界の大規模コラボ作品にマット・デイモンと並んで僕が出演するっていうプロジェクトをエージェントが持ってきた時は本気にしなかった。僕が間違ってたよ——結果的に本当の話で、向こうから僕に役をオファーしてくれたんだ。5か月近く中国に滞在してチャン・イーモウマット・デイモンウィレム・デフォーアンディ・ラウと一緒に映画を撮った。

デイヴィッド:恐ろしかった? 崇拝している監督の一人と仕事をするのは?

ペドロ:最初はすごく緊張したけど、彼にメールしたんだ。告白しないといけない気がして——こんなにも憧れている相手と一緒に仕事ができるとは想像もしてなかったって事を隠すのは愚かだと思った。多分『上海ルージュ』は映画館で4回くらい観たと思う——母さんや友達を連れて行ってね。かなり研究したし自分が知っている事を自慢に思うフィルムメーカーだった。当時は90年代で、現存する最高のインディペンデント映画のうちのいくつかは彼が作ってたんだ。そしたら急に誰もが「『HERO』観た?」って言い出して、「おいおい、『HERO』の前に7作観てるわ!」ってなったよね。それで彼にメッセージを書いてそんな話を伝えたら、中国に行った時プロデューサーの一人が僕に封筒を渡して——その美しい封筒を開けると上品な紙に漢字で手書きされたチャン・イーモウからの返事が入ってた。まるで芸術品だったよ。実際額装したんだ。僕のメッセージと作品への参加に対するお礼が書いてあった。彼は一流だよ。才能があるのと同じくらい親切なんだ。僕も僕のメールも敵わなかった……

デイヴィッド:あなたに漢字でお便りを書こうとしたのですが、中国語を知らないので滅茶苦茶な文章になってしまう事に気付きました。

ペドロ:あれを上回るには歌う電報を送るしかない。

デイヴィッド:中国で過ごす5か月はベルファストでの3か月に近いものがありそうだね。同じくらい良いとは思わないけど。聞かせてもらえるような冒険話はある?

ペドロ:折に触れては観光客みたいに旅をして回ったよ。撮影で多くの時間を過ごしてマット・デイモンと仲良くなれたんだ。なぜなら誰もが知っての通り、彼はマジで嫌なやつだから(笑)

デイヴィッド:酷い人で有名だよね。

ペドロ:業界じゃ名の知れた悪人だ。彼と彼の妻は僕を家族同然に扱ってくれて、人生最高の時間を過ごしたよ。機会があるたびに一緒に観光して——みんなで香港に行ったり、僕はバンコクにいる友人達に会いに行った。あの週末についてはちょっと話せないね。

デイヴィッド:マット・デイモンと話してて「うわ、僕がマット・デイモンと会話してるなんて」と考えたりしなかった?

ペドロ:そう考えるまでにしばらくかかったね。彼と会った最初の頃は時差ボケが役立ったんだ——頭がぼーっとしてた。マットが挨拶に来てくれて、僕らは共演シーンがたくさん予定されてたから彼はただ「友達になろうぜ」って言って、僕は……もちろん! 君がそう言うなら! って感じだった。

デイヴィッド:マット・デイモンの親友の座をベン・アフレックから奪ったと言える?

ペドロ:まあね。ベンに譲ろうかな。

デイヴィッド:ベンの嫉妬を煽る為に君とマットでオスカーを獲る脚本を書かなきゃ。

ペドロ:それが次だろうね……反ユダヤ主義の代わりに僕のキャリアを終わらせる方法の。

デイヴィッド:『グレートウォール』はいつ公開?

ペドロ:2月!

デイヴィッド:元々君がオベリン役に決まった時、君はラティーノとは言えないんじゃないかって論争が起きたよね。今作のマット・デイモンを巡る論争についてどう思う? 彼が白人である事が批判されてるの?

ペドロ:うん、彼が白人だっていうのはとても……

デイヴィッド:明白? マット・デイモンが白人だって事は誰も否定できない。

ペドロ:否定しようがないね。今回は彼がラティーノではない事が問題視されてるんじゃないのは確かだ。でも彼が白人である事にはストーリー上とても明確な背景があるんだよ。1分20秒の予告編じゃなく映画本編が公開されてから議論すべきだと思う。それでも民族のリプレゼンテーションという点で正当な賛否両論の意見が出る可能性はあると思うけど、これはハリウッドの怪物映画と壮大な中国映画が組み合わさった映画だし、明確なビジョンを持った中国人の監督が最終的に舵を取っている作品なんだ。

デイヴィッド:現代の最も偉大な監督の一人だ。

ペドロ:言うなれば中国のスピルバーグだね。

デイヴィッド:仮に彼がハリウッドで最も白い白人男性と仕事がしたいって言うなら誰も断れないよね?

ペドロ:その通り!(笑)  今作は中国人クルーが撮影してるし、中国の大スター達や新顔達が英雄的な役を演じてる。人々はマット・デイモン出演の『グレートウォール』っていう映画だっていう情報に基づいて議論してるけど、映画を観てもらわないと。

デイヴィッド:そうだね、それは妥当な論な気がする。とはいえ君がラティーノの要件を満たしてないって事は否定しがたいと思う。君はチリ生まれで、CIAが資金提供したクーデターが起きてご両親は避難しないといけなかった訳でしょ——そのクーデターさえなかったら君はチリ人だっただろうにね。CIAが全部を台無しにしたようなもんじゃない? どう思う?

ペドロ:マジでCIAの功績にするつもり?

デイヴィッド:もしかしたら君は俳優にならず、ゲーム・オブ・スローンズ出演に繋がる出来事は起きなかったかもしれない。

ペドロ:自力で起こしてたよ。チリのサンティアゴから君のところまで這って行ってオフィスのドアをノックして、「君の代理闘士になる」って言ってね。

デイヴィッド:『グレートウォール』で君が演じるキャラクターはどこの人なの?

ペドロ:エスパーニャ。まさに僕の祖先の出身地だよ。

デイヴィッド:それについては文句のつけようがない。マットのキャラクターは?

ペドロ:彼はイギリス人。

デイヴィッド:彼にアクセントはあるの? 映画の中では中国語で喋るの?

ペドロ:中国語は喋らない。彼はイギリス人だけど——西暦1100年の話だからアクセントはどうだか。

デイヴィッド:古代の英国アクセント? それはよさそうだ。どういうアクセントか誰も知らないだろうし。もしかしたらマット・デイモンの喋り方そのままかもしれないもんね。
それじゃ、抜けはないかな? 君が話題にしたかった事は全部聞けた? 君の政治的スタンスとか——みんなは君のトランプ派の計略を知ってるの? 数少ないトランプ氏支持のハリウッド俳優でいるってどんな感じか教えてもらえる?

ペドロ:(笑) 僕のバーコードヘアはトランプの髪型遍歴の初期をお手本にしてるんだ。デイヴィッド、君はどうする、移住する? もしトランプが——

デイヴィッド:これはペドロ・パスカルのインタビューだぞ! 僕はインタビューされる側じゃない。質問をするのは僕だ。

ペドロ:トランプが当選する訳ないって本当に思う?

デイヴィッド:本当に思うよ。

ペドロ:マジで君が電話をかけてくる5分前に知らない人と言い争いになったんだ。コーヒーを買ってるところで、出来上がった時に呼ぶ為にカップに名前を書くからって名前を聞かれてね、その店員が「ボート・フォー・ペドロだね」って——その台詞は初耳だった[訳注:映画『ナポレオン・ダイナマイト』のネタ]。それから「候補者2人よりもあなたに投票するよ」って言われたんだ。僕は「ちょっと、マジで?」って言って——コーヒーを作ってくれてたのは人種が入り混じった男性だったんだけど——「本気でそう思ってるの? トランプに投票する事を考えるくらいヒラリーが嫌いって事!?」って。ある意味恐怖が再燃した。考えるまでもない選択だと思うのに、スターバックスで熱心に仕事をしてるミックスド・レースの男性が迷ってるっていうんだから! 心から怖くなったよ。

デイヴィッド:君が彼に説いてくれた事を願うよ。

ペドロ:彼はただただ「ヒラリーについて知らないんだ」って言うから、「何を知らないの?」って聞いたら「ただ彼女を信用できないんだよ」って。でも信用・信頼してる他の政治家と彼女の差が何なのかは答えられないんだよ。

デイヴィッド:そりゃよかった。これで全部喋れたね。

ペドロ:喋りすぎたと思うな。