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Hammer of the Gods

『J・エドガー』におけるJ・エドガー・フーヴァーとクライド・トルソンの関係について、脚本のブラック氏とアミハマさんの話を訳してみました。

確か別のインタビューで年上の(ゲイの)友人と話して当時の情勢について話を聞いたと話していた記憶があります。

ダスティン・ランス・ブラック:台本を読んだ時クライドのことを最初にどう思った?

アーミー・ハマー:クライドは僕には納得がいかなかった。この男はJ・エドガーをいち人間として扱うんだ――そうするのは世界で彼だけだ。クライドは二人の関係が進むにつれ暴言に耐えるのみ。額にキスを受けたり「きみが必要だ」という言葉のようなほんの少しの報いはあった。あるにはあったけど、彼がそばに留まるには十分じゃないように思えたんだ。それから僕はゲイの友達とご飯に行って、「ねえ、一緒に考えてもらっていいかな。知りたくてさ」みたいに聞いてみた。彼は「うん、ハマー。人は志向が全く違う可能性さえある相手に惹かれてしまうことがあって、それについては為す術がないんだ。自分が彼を想うのと同じだけ彼も自分を気にかけてくれている、そういう微かな希望が時折見えれば、それだけで気持ちが続くには十分なんだよ」と。「ワオ、なるほど」という感じだった。

ブラック:エドガーは信じられないほどキツい態度の後にああいったラブレターに近い手紙をクライドに送ったんだろうね。

ハマー:僕は調査員を雇った。一体彼は何をしてるんだ、他にいい人を見つけに行けよ、と思っていた。でもできないんだよね。筋は通ってたし悲劇的に美しい話だ。僕はできる限りの事を学ぼうとした――双方を理解するために一生懸命だった。

ブラック:僕らが話しているのは1927年のことであって2011年じゃない。その頃は選択肢は多くなかった。吐露する事は許されなかったんだ。名を呼ぶことも憚られていたけど、それでもそれは愛だった。

ハマー:もちろん。その名を口にしていたら、仕事、 社会的地位、キャリア、家族、何もかもが犠牲になっただろう。ひたすら押しつぶされていたから自分の性的指向を明らかにするなんて到底無理なんだ。だからその関係を激しく揺り動かすプレッシャーもかかる。

ブラック:クライドの本当の気持ちというのは行間に存在する必要があった。それが一番実情に近かっただろうからね。最初にこの映画の粗編集版を観た時のことを覚えていて、言葉はアレだけど、君は2時間の間レオナルド・ディカプリオをほとんど視姦してた。それについて二人で話をしたり取り組んだりしたの?

ハマー:そんな事ないよ(笑) そうなっちゃっただけ。

ブラック:最近FBIがクリント(・イーストウッド)とレオに彼らがゲイだったという確たる根拠はなかった事を話したと言ってた。それに対する君の反応はどう?

ハマー:僕は写真のバインダーを3つ持っていて、そのほぼ全てで彼らは触れあったり凭れあっていた。休暇に出掛けたり大勢でレストランに行く時に常に特定の男性の隣にいる理由は? クライドの写真を400枚持ってるけど、彼らはいつも隣同士にいる。それからフーヴァーがクライドの寝顔写真のコレクションを持っていた事も見つけ出した。それは僕にとっては、証拠ではないとしても間違いなく根拠以上のものだ。

ブラック:仮に独身男性と独身女性がFBIでもどこでもいいが一緒に働いていて、毎朝一緒に出勤し毎日ランチに行き毎晩一緒に帰り休暇ごとに一緒に出掛け同じホテルの部屋に泊まったとしたら、そういう仲だったという事に疑いは挟まれないだろう。でも2人の結婚しない男性がまったく同じ事をすると、歴史的な偏見があるせいなんだろうけど、一部の人々はなお結論を出す事を躊躇する。ほとんど不可能な立証責任を要求するんだ。

ハマー:その通りだ。

ブラック:君は他の出演者の誰よりもキスシーンについて公の場で話してたような気がするよ。

ハマー:大した事じゃないのに! いつも最初に聞かれる質問なんだ。「レオとのキスはどう? ゲイシーンをやるのってどう?」一体なんなんだ? 変わらないよ! 相手が女優ならこれは最初にされる質問じゃないんだ、不適切だからね。この映画で僕はマシンガンだって撃たなきゃいけなかったんだ。マシンガンの撃ち方なんて知らないのに手渡されて「撃て」って言われて「わかった」って答えるんだよ。あのシーンでは「何てことだ、僕レオナルド・ディカプリオにキスしようとしてる! どうしよう、男とキスするんだ」なんて事より考えてた事がたくさんある。

ブラック:この映画のテーマはどのように現代にあてはまると思う?

ハマー:これは過ぎた時間の投影のようなものであり、そして、完全に過ぎてはいないというなら間もなく過ぎるだろう事だ。現在カミングアウトして「あのさ、僕はゲイでそれを誇りに思ってるんだ」と言うと祝福に近いものを受ける。「良かったね、自分のやるべき事をしなさい」というような事を言われるだろう。

ブラック:今作は君がほぼ過去になっていて欲しいと望む時代に立ち返るものだと考えてるんだね?

ハマー:そうだ。もはやこの世界にはその余地はないからね。世界はとても狭くなっているから同じく国籍を気にする余地もすぐなくなるだろう。どの地域出身だとかどの州出身だとか意識することに何の意味がある? 「アーカンソー出身なんです、あなたはどの州?」「ネブラスカ出身なんですね、どんなところなんですか!?」無いでしょ。出身はどこ?とか性的指向は?なんて気にかけていられないほど世界は狭くなりつつある。とても古い考えだ。

ブラック:ご家族や近しい人からこの映画に携わる事について反対はされた?

ハマー:確かに反対は受けた。僕の母方の家族はオクラホマの人間でとても保守的なんだ。祖父は大恐慌を切り抜けた、とても古風で聖職者のような人でね。でも嫌な顔をしたのは彼ではなかったんだ。祖父は「素晴らしいね!」と喜んでくれて、それは興味深かった。でも確かに「おいおい、だめだよ、そういう役は演じちゃいけない!」っていう人達もいたよ。どうして? 僕がこの役を演じる事をどうしてそう問題視するんだ? この人物は今まで演じたどの役とも違う。それが僕が俳優をしている理由なんだ。