【インタビューマガジン】マシュー・グード×マシュー・リース
リースさんによるグードさんのインタビュー。
マシュー・リース(マシュー・リス、MATTHEW RHYS):僕らが何をしているのか不思議に思っている場合に備えて。Ear Inn*1のテーブルの上にクレヨンの小さな瓶があって、僕は録音機器が惨たらしい殺人事件の被害者たちだという素振りでそれをスケッチしてる。
マシュー・グード(マシュー・グッド、MATTHEW GOODE):僕らが知り合いになったきっかけの一つであるローレンス・フォックスの話をしてるところ。彼ら(リースとフォックス)はずいぶん前の『デス・フロント』(2002年)で初めて共演した。
リース:『批評家から称賛されたデス・フロント』って言ってもらえるかな。
グード:それで彼からきみのことを聞いたんだ。ローレンスはすぐにきみを大好きになって、きみはすごく才能があるし誰かがファッキンムービースターになるとすればそれはマシュー・リースだ、って言ってた。
リース:まあ会う人会う人にそう言ってくれって伝えてるからな。
グード:それ以来僕は「その人と一杯飲まなきゃ」と思っていて。それから衣装のフィッティングで顔を合わせることが続いて、『高慢と偏見、そして殺人』(2013)で共演するまで8年くらいかかった。
リース:BBCの『高慢と偏見、そして殺人』だね。ピーター・オトゥールと共演するようなものだってわかってたし、僕は間違ってなかった!
グード:面白かったよ。本当に。それにアンナ・マックスウェル・マーティン。
リース:誰? 誰?
グード:楽しい人。
リース:楽しい。でも初日はみんなリハーサルでダルストンのなんだか変な場所に行ったんだよね。
グード:僕は少し遅刻したんだ。
リース:そうだった?
グード:そう、30分。「ああ、初日から困った事に」と落ち込んだ。時間に正確な事を自負してるんだ。今日は早く来ただろ?
リース:早かった! 彼は背が高くて目立つのと同じくらいきっちり時間を守るんだ。でも11時28分の遅刻は僕らは一杯飲むべきかもしれないという暗示だった。
グード:パブへの小旅行ね。
リース:初日の緊張を和らげてくれるもの。
グード:あのあたりのパブは歴史的で本当にいい店ばかりだ。あれはどちらかというと実態調査だったね。
リース:そうだね。しかもきみが特殊なビールを出すパブを知っていて僕はものすごく感銘を受けた。あの夏は僕にとってはイーニッド・ブライトン小説めいてたよ。悲しいかな何も事件を解決できなかったけどね。解決した犯罪といえば僕らがドラマの中でやってた事だけだった(笑)
グード:僕はちょっとそこにいてから子供に会いにとんぼ返りした。一方きみはダーシーを演じていたゆえに……
リース:彼は全然喋らないんだ。極力物憂げな雰囲気を醸そうとする。
グード:とても良い演技だったよ。
リース:ありがとう、ダーリン。
グード:大きいもみあげ生やしてね。
リース:広いもみあげ。さあ教えて、マシュー・グード。
グード:始めるとしようか。
リース:最初から始めよう。
グード:どうぞ。
リース:『イミテーション・ゲーム』の話をきみのエージェントが持ってきた時、モノマネありのゲーム番組かと思った?
グード:あの……(笑)
リース:モノマネをしなきゃいけないバージョンの『Generation Game』かと?
グード:実際は話を持って来たのはエージェントじゃなかったんだ。あの時は――
リース:どうでもいいや、次の質問次の質問(笑)
グード:この野郎。
リース:誰が話を持ってきたの?
グード:ベネディクト(・カンバーバッチ)が電話してきたんだ。脚本が出回ってたから作品のことは知ってた。名前を出せないビッグなハリウッドスターが出演する予定だった。
リース:誰?
グード:レオだよ! レオナルド。レオナルド・ディカプリオ様。
リース:キーラ・ナイトレイの役で?
グード:キーラ・ナイトレイの役でね。その後彼が出演しないことに決めて作品は頓挫したんだ。それから突然、ショッピングでソフィーと一緒に子供たちを車から降ろしてる時にベネディクトから電話が来て「ヒュー役をやりたくないか?」と。「うん。それは素晴らしいと思う。子供たちを中に入れてご飯を食べさせるから掛け直してもらえる?」と答えた。
リース:ショービジネスの世界へようこそ、みなさん。こういう仕組みなんだ、子供たちを降ろして大規模な映画での役をゲット。ベネディクトとはどうやって知り合ったの?
グード:ベネディクトのことは何年も知ってた。初仕事の一つで僕が演じたのが、素敵なナット・パーカー出演の『リンリー警部 捜査ファイル』でのリンリー警部のヘロインをやってる兄弟役だったんだ。麻薬中毒の僕の彼女が――実際のじゃなく作中のね――
リース:彼女役がベネディクト・カンバーバッチ?
グード:彼女役が当時のカンバーバッチの恋人だったんだ。それでラップパーティ*2でオックスフォード・ストリートのディスコ・ダンスフロアのあるあの店に行ったんだ。ほら、あのピカピカ光る。
リース:うん。
グード:その頃ラップパーティといえばあそこによく行ってたんだよね。缶のレッドストライプしか飲めるものがなかった。
リース:話は別だけど、お気に入りのラップパーティとその理由は?
グード:とてもいい質問だ。ベンは今は友達だから。だけどラップパーティってそう素晴らしいものじゃない事が多いんだ。
リース:いつもクソだよ。
グード:悲しいっていう感じじゃないからね。
リース:(wrap partyの)wrapは何の頭文字?
グード:んー……
リース:wind、reel、and print。
グード:ああ、それだ! なんだよ、もう僕より賢く見えるな。
リース:それが基本計画だったからさ。いや、ごめん。ずっと話の腰を折ってる。あまり良いインタビューじゃないな。
グード:素晴らしいインタビューだよ。
リース:うん、それで、その時彼と会って以来友人同士なんだね。
グード:そう。共演はこれが初めてだ。ずっと一緒に飲んでお互いの成功を祝福しあうだけだったから。
リース:あー。
グード:彼の方がずっと成功してるって事は彼の方が僕に奢ってくれてるって事だから最高だよ。彼はいつもちらっと顔を見せて家族に会うんだ。最近はあまり見かけないな、当然ながら彼はこの世界の遠く離れた所にいるからね。
グード:(笑) カーディフとかね。いやドクター・フーには出てなかった。シャーロックだよ。
リース:テストしましたがマシュー・グードはパスしました!
グード:『IMdbヒーロー:M.Goode』。
リース:アレグザンダーという役を学んだ時最初に考えた事はなんだった?
グード:最初に考えた事は……
リース:どんな靴かってこと? どんなスーツか? 煙草のこと?
グード:それら全部だね。時代物の映画での喫煙が好きなんだ、当時はみんなが吸ってたから。
リース:煙突たち。
グード:「数学がもっと出てくれば爆弾や装置についてもう少し知るのが楽しかっただろうに残念だな」と考えたのを覚えてる。
リース:同感だよ。
グード:言うまでもないけど世界一賢い男性の一員を演じるなら本当に賢そうに見せたいものだよね。
リース:うん。どういう数学のリサーチをした?
グード:必要とされなかったからたくさんはやってない。
リース: 計算とかそういう事は?
グード:僕たちが着目したのは爆弾の作り方だったんだ――その爆弾がどう組み立てられてるか。マシュー・ビアードという素敵な男性がいくつかの本を持って来てくれたから、僕らはその装置がどのように調整されていてどういう物なのかという知識を理解しようと努めた。Googleの仕組みと同じアルゴリズムで動いてるんだよ。
リース:この世界も同じだと思うな。
グード:とても魅力的だったけど、僕らが同じ頃ガーディアン紙のクロスワードに苦心してた事を考えるとちょっと難解すぎた。
リース:それじゃ、作中には出て来ないかもしれないけど人に伝えたい、大声で叫びたい事があるとしたらそれは何?
グード:僕がとても気に入ってる事なんだけど、若い頃エクセターにあるPinder and Tuckwellっていう店で学校の制服を買ってたんだ。そこは古き良きシステムの店で、伝票を――勘定書きを――もらって、圧縮したエアチューブに小さなカプセルに入れたお金を入れるんだ。古い制服の買い物でそれが一番楽しいところだった。いつも「自分の家にあれを置きたいなあ」と思ってたよ。ともかく、ヒュー・アレグザンダーはブレッチリー・パークでの仕事が持ち掛けられた時ジョン・ルイス(百貨店)との提携のために働いてた。彼は同社のエンジニア部門の責任者だった。そしてブレッチリーに行った時にそのシステムを設置したんだ。
リース:ジョン・ルイスだったら店内を一周するために管が山ほど必要になるでしょ。それに圧縮機も大量に。どうするの?
グード:僕はどこかのバックルームで必死にペダルを漕いでる作業員がいるのかなって想像した。
リース:ハムスターみたいに。
グード:そうそう。
リース:いつもインタビューを受けていて(わかってもらいたい)事はある?
グード:やらかさないようにしてる。僕が避けたい事は、冗談のつもりで言って――
リース:誤解されること。
グード:そうなんだ。だけどその反面、なんでも深刻に受け止めそうなタイプにはなりたくない。古きRSC*3がお辞儀をする時と一緒だよ、「心が痛みました」っていう表情をする人たち。
リース:僕はよくきみをそう見てるよ。
グード:僕との付き合いをきみが楽しいって感じ始めたのはいつだった?
リース:『リンリー警部』じゃないかな。その時に僕はきみを楽しみ出したね。「この麻薬中毒者は誰だ?」って。
グード:僕は『Peaches』(2000年)で初めてきみの事を耳にしたと思う。
リース:桃にかぶりついた時? 初めてあの果物を経験した?
グード:ウエストロンドンにウェールズの若者二人――きみとヨアン(・グリフィズ)が住んでるって噂を聞いたんだ。*4高評価を受けてる二人だって。
リース:ウェールズでの評価ね。
グード:だけどとてもハンサムで有能で世界をものにしかけてるって。それからきみは絶えずみんなの心を痛めてた――姉はブラザーズ&シスターズを観て完全にきみに恋しちゃってるんだ。
リース:いいね。お姉さんにいつ会える?
グード:すぐにでも。
リース:釣りの話を聞かせて。
グード:よし!
リース:褒めてくれたからね。
グード:(笑) 実は好きじゃないんだけどね。すごく受け止めにくいことだと思わない? 特に劇場だと。
リース:褒め言葉が?
グード:うん。本当に親切なことだけど、褒め言葉ってとても気まずい事に感じる。
リース:どうして? 本音かどうか疑わしいから?
グード:違うよ。照れ臭いんだと思う。
リース:照れ臭い事だよ。僕らの国民精神では受け入れがたいと思う。
グード:そう、あまり英国らしくない。
リース:きみは不安と自己不信で若干満たされてる?
グード:うん。
リース:自分の才能に疑いを抱く?
グード:非常に。
リース:それは関係のある事だと思う?
グード:たぶん。
リース:賞賛を受け止める時「嘘つき! あなたは嘘をついてる! 僕は下手くそだ! 誤魔化してるだけなんだ!」と思うものだよね。自分が誤魔化しているように感じる?
グード:彼らをふいに疑わしく思うのは、明らかに、僕を褒めてくれている場合彼らは自分が何の話をしているのかわかっていないからなんだ。これは素晴らしい職業だよ。きみのことはわからないけど、きみも同じだって想像してる。僕はこの仕事が大好きだ。人々が大好きだ。ある作品の台詞が――
リース:ドレッサー?
グード:違う。
リース:ウィズネイル(と僕)?
グード:ピーター・オトゥールの舞台。
リース:ジェフリー・バーナードか。
グード:『Jeffrey Bernard is Unwell』で彼がレースに行く人々の話をして「犯罪者たちだ! 愚か者たちだ!」だとか言うんだけど、それから「そして並外れてよい人々だ」と。僕はいつもそういう風に考えてる。
リース:僕らはまったくの放浪者なんだ。下手くそな事をするしこんな変わった奇妙な仕事をしてるのけど、思うに僕らの世界に大して批判はないんだ。常に容認がある。
グード:それはパフォーマンスというより振る舞いに対して?
リース:両方。『The Generation Game』での経験はどうだった?
グード:姉がThe Generation Gameによく出てた。
リース:どのお姉さん?
グード:一人しかいないよ。
リース:じゃあ僕きみのお姉さんに会ったことあるよ!
グード:スカイプで会ったね。
リース:いや、彼らと一緒に過ごしたことがある。みんなでブッシュウィックに行った。
グード:そうだ(笑) そうかそうか。覚えてるよ。
リース:イミテーション・ゲームでの経験はどうだった?
グード:テディ(グードの末の娘)が生まれたばかりだったんだ。ちょうどプレッシャーっていう映画を撮り終えて――文字通りの最終日、アバディーンで撮影してた。愉快なダニー・ヒューストンと一緒の本当に素晴らしい撮影だった。「陣痛が始まってる」っていう電話を受けて、「なんてことだ!」となって。監督のロン(・スカルペロ)に話したら彼はものすごく親切な事に「クソ、いいよわかった。このシーンにはきみはいなくていいから外そう。きみのシーンを今撮っちゃって30分で終わらせるぞ」と。それで彼は僕のシーンを撮り終えて、僕は飛行機に乗ってアバディーンからロンドンのヒースローへ。そうして僕が到着して約二時間後にちいさなテディが生まれたんだ。
リース:間に合ったの? 見事だな。
グード:それから約三日後にイミテーションゲームのリハーサルがあってとても過酷だった。
リース:眠らずに。
グード:まあ(グードの妻の)ソフは明らかにもっと睡眠不足だったね。
リース:きみのお母さんは本当にアマチュアの演劇の演出をしたの?
グード:本当にそうだよ。今でもやってる。
リース:それじゃあドラマと共に育った人生なんだね。古典作品を紹介してもらった?
グード:いいや。地方の村の劇場でやった『The Wind in the Willows』をカウントしない限りは。
リース:それぞ古典作品だろ、何言ってんだよ! 釣りの話に戻ろう。
グード:釣りは大好き。
リース:初めて釣りをしたのはいつ?
グード:忘れもしないよ。僕はカナル・ホリデーでよくウェールズに行ってたんだ。初めて釣りを始めた時はウェールズのブレコンの運河にいた。カナルボートを止めて、父さんが2本の栗色をした伸縮式の釣竿を取り出してリールを取り付けたんだ。
リース:お父さんは釣り人だったの?
グード:そう、釣りが大好きだった。実際僕らは父さんが子供の頃使ってた釣り具を使ったんだ。もうないんだけどね。父さんは虫をつけて投げてから渡してくれた。僕は8歳か9歳だっただろう。その後5秒くらいして何かが離れていくのを見て、1匹釣れたんだ。綺麗なローチだった――完璧で小さくて銀色で、4分の3ポンドくらいの。
リース:釣りの醍醐味とは?
グード:とてもエキサイティングなんだ――演技と同じで、とてもエキサイティングなシーンもあればその後何もしなかったり何も起きない時間もある。
リース:ウィンストン・チャーチルが塹壕戦について言ったようなこと?
グード:たぶん。なんて言ったの?
リース:こんな感じ――
グード:「ここはあんまりよくないぞ」?
リース:「退屈な長い時期は先の見えない恐怖のスコールによって中断される」。
グード:うん。もしもホホジロザメを釣ろうとしてたら釣りはとても恐ろしいと思うよ。
リース:古風な人物を自称する? それとも伝統主義者だと? 自分に古風な部分はある?
グード:それは同じ事じゃないの?
リース:違うよ。
グード:僕はとても古風な人間だと思う。きみは?
リース:僕は古風というよりは伝統主義者だね。(双方笑う)
グード:僕らはふたりとも'40年代の暮らしや当時の仕事が合ってたと思う。
リース:そうだね。軍隊?
グード:最初に軍、それから演劇界へ。
リース:軍に参加したかっただろうと思う?
グード:参加しただろうね(笑) ソフにいつも「昔だったら軍で大活躍だった」って言ってるんだ。彼女は「あなたは間違いなく落ちこぼれだった」って。
リース:軍で役立ったであろうきみの性質はなんだと思う?
グード:忠誠心だね、確実に。
リース:伝統の意識。
グード:いつだって。古風なタイプの人間なんだ。
リース:リーダーシップは?
グード:リーダーシップの技術は持ってると思う。
リース:命令に従うのは上手?
グード:愛してる場合はね、自分の……
リース:国を?
グード:命令している人物を僕がすっかり理解してる場合は。そうやって効果的に仕事をするんだ。もしその場に無知なでくの坊が参加していたら「うん、問題ないよ、あなたの望む事をしよう」と答えるのはとても難しい。
リース:監督を殴ったことはある?
グード:一度もない。
リース:他の俳優のことは?
グード:仕事以外でなら。
リース:おっと。どうぞ続けて。それともやめておくか。
グード:やめておこう。
リース:女優は殴ったことある?
グード:何回か。
リース:ローレンス・フォックスのこと殴った?
グード:殴ってない! 彼とは昔一緒に住んでたんだ。あっという間に仲良くなる。僕とマシュー・リースはワインについての番組に出るよ。
リース:僕らがショービジネスに身を置いていることを愚痴る(Whine:飲み物のワインと同じ発音)場だね。ワインワイン(Whine Wine)って呼んだ方がいい? それともワイノット(Wine Not)?
グード:ヴァンヴァン(Vin vin:vinはフランス語でワイン)。
リース:で、ヴァン(van)で撮るんだ。
グード:本当に楽しみだ。
リース:僕もだよ。
グード:でもちょっと心配なのが――
リース:ダウントン・アビーからの解放が我々をダウントン・アビーへと完全に導く! どうしてそうなったの?
グード:僕らがそこに辿り着く以前に一部の人々は目覚ましいプレゼンターだと思う。芸術の域だよ。そこへどれだけすっと滑り込めるかわからないんだ。きみに頼るつもりでいるよ。
リース:仲間と一緒にやるなら一人で回すのとは違うと思うよ。お互いの言葉を引き出すんだ。将来の夢はなんだった?
グード:すごく列車の運転士になりたかった。でもお喋りできる列車が存在しない事に動揺してね。その後はスポーツマンが夢だった。
リース:きみの人生においてスポーツはどれだけ大きな役割を演じてる?
グード:驚異的な役割だったものだよ。僕はよく州や学校でたくさんスポーツをしていたから。チームスポーツが大好きなんだ。男同士は最高。仲間意識というものが大好きなんだ。それが演技を好きな理由だよ。
リース:それが軍に入りたかったであろう理由?
グード:そう、似てる。みんなが一つの理由のため戦う。不運なのは、俳優業というのは最良の状態ではない時に一つのために戦うものだという事なんだ。「あいつが彼の出番を奪ってる」というような話が僕は耐えられない。なぜならそれは仕事をプロジェクトに尽くすという事より競争に仕立てることだから。自分はただそのプロジェクトに尽くすという事以上に目立とうとするような俳優ではないと僕は思ってるんだ。
リース:うん、きみはそれが得意だよね。いつもチーム思いだ。
グード:僕はチームプレイヤーなんだ。誰かが問題を起こすのは好きじゃない。今までに一人だけうまくいかなかった俳優がいて、嫌な経験だったし5週間くらい口をきかなかった。名前を出すつもりはないけど。
リース:クレヨンで名前書いてよ。
グード:彼らの名前を書いたりしないよ。でもきみ用に書いてあげる。
リース:オーケー。(読み上げている風に)ビル・ナ…イ。
グード:(笑) ビル・ナイじゃないから!
リース:彼がそうテーブルに書いたんだけど僕には誰だかわからないなあ。
グード:はいはい。もういいよ。色を塗らせて――青色だな、そういう気持ちになったから。
リース:演劇で? 映画で?
グード:映画だった。
リース:そして彼らは出番を盗もうとした?
グード:話題にする必要があるほどすごく行儀がなってなかったってだけだよ。
リース:あ、誰の事だかわかったぞ!
グード:それに人は時々しくじるものだ。だからもし彼と再会したら「調子はどう? 元気かな」って話しかけたいと思う。必ずしも彼らとまた仕事をしたい訳ではないけど清算はしなきゃ。ただの一つの仕事だ。僕にとってあれは悲惨な仕事だったよ。すっかり終わった事だしまた彼と飲むこともあるかもしれない。もし彼らが未だに嫌なやつらだったら、その時は――
リース:殴っちゃえ!
グード:その時はきみが飛びかかる、真のウェールズスタイルでね。
リース:ヒュー・アレグザンダーはちょっと魅力的な色男として知られていたの?
グード:いいや。とても上品でとても賢い人として知られていたんじゃないかな。彼は夜勤を愛していて、誰よりも働いたと思うしあまり眠らなかった。暗号を愛していたんだ。実際戦後も彼は暗号解読部門の責任者を18年間務め続けて、それによって早逝したんだと思う。でもとてもいい人だったんだ。彼はイーディスという素敵な女性と結婚した。僕の演じた彼の姿はアラン・チューニングの有様を引き立たせるもので――ヒューをむしろ支配者男性的、魅力的な人物に見せていて、少しやりづらかった。そういう風に描かれていたからそう演じたけど少し申し訳なく感じたよ。女狂いの嫌なやつみたいに見える事がご家族の気に障らない事を願う。
リース:そんな印象を与えるとは思わないけど。
グード:いや、彼は確かに女好きと思われてたんだ。でも当時は生きていけるかどうかわからなかったから遊びが盛んだったんだよ。きみの本当の名前がマシュー・エヴァンスだって大勢が知ってるの?*5
リース:そう、ダウントン・アビーね。ワクワクするよ。
グード:なんでポテトチップスを食べちゃいけないの? これが終わったらお昼食べようよ。
リース:ダウントンに参加する事への懸念は?
グード:ない。そうだな、以前はあったよ。一番の懸念はまだ会っていないマギー・スミスのこと。でも彼女は断然素敵な人だって聞いているから怖がるような事はないと思いたい。
リース:きみがどれだけ魅力的かという事を人からよく聞く? 正直に。
グード:一番一緒に過ごしてる妻からは聞かないね。前回人と電話で話した時は彼女に「あなた今すごく魅力が薄い」と言われた。僕が自分に失望してるような感じがしたらしい。
リース:きみが魅力的であることに人が慣れきっちゃってるから? だってきみは魅力的だよ。『魅力的(charming)』の代名詞だ。
グード:きみもそうだよ。
リース:話を逸らすのはやめろよ! きみのインタビューなんだから。
グード:逸らしてないよ、お互い喋りあう必要があるんだよ。
リース:だめ。
グード:前もこれをやったことがあるんだ。
リース:誰と?
グード:スカーレット。
リース:ヨハンソン?
グード:そう。
リース:何の時に?
グード:『マッチポイント』で。この素晴らしい『インタビュー』誌の仕事を受けることになって彼女が僕にインタビューしてくれたんだ。写真や何かは僕についてだったけどもうちょっと行ったり来たりする感じだった。
リース:まあそうなるよね。スカーレット・ヨハンソンとなら。
グード:彼女はとても感じが良い、とても素敵な女性だよ。ずいぶん会ってないな。
リース:彼女、今は結婚して子供もいるから。